夏でも、冬でも
変わらない姿でオレの隣にいて



* 夏は着崩し、冬は… *




「寒くないの、ユウ?」

吐く息も白い土地に任務でやってきて、その寒さに全身が凍てつく。
何故かいつもと寸分変わらず平然とした表情で、神田はチラリとラビを見やった。
対するラビはマフラーに顔を埋めるようにして防寒している。
それでも僅かに外気に触れる顔は冷たく、今にも凍りつきそうだ。
ブルッと全身が無意識に震える。
マフラーの中では歯がカチカチと音を立てていた。とにかく寒い。

「別に……」

返事をするのも面倒だと言わんばかりに、神田は短く返した。
僅かにコートの襟を立てるようにしているものの、ロクな防寒もない。
いつ敵に襲われるか分からない任務の最中。
神田はコートのポケットに手を入れることもしなかった。

「あんま無理してっと風邪ひくよ?」
「そんなヤワじゃねェ」

心配から出た言葉にも、この反応。ラビは苦笑した。
神田が可愛くない反応をするのは、いつものこと。
それを知っているので、ラビは何も言わずに口を噤んだ。
最も、寒さで喋り続けることも出来ないのだが。
この極限状態は、前にも経験した事があった。

そう、確か……
暑い夏の日にも同じような会話をしたような気がする。



■□



「ユウ、暑くねェ?」

きっちりと団服を着込んだ神田に、ラビはうんざりと声をかける。
夏の暑さは不快そのもので。
任務の合間の戦闘などで動いた後は特に、暑さが身体に纏わりつく。

「別に……」

涼しい顔で、ロクに汗をかいた後さえ見せず、神田は呟いた。
ラビは熱中症にでもなりはしないかと心配したのだが、
『余計なお世話だ』の一言と共に一蹴されてしまう。

「なぁ、脱いでいい?」

宿の部屋には扇風機が回っていたが、暑さを和らげるには役不足で。
ラビは水風呂にでも浸かりたいような気分だった。
服を脱ぐことで少しでも暑さをしのげれば……。

「好きにしろよ」

神田の声に、ラビは頷いて服を着崩しにかかる。
すると、不自然に神田は目を背ける。仕舞いには身体ごと背中を向けた。

「なに? どしたの、ユウ……」
「……なんでもねェ」

照れて。
ラビを直視できなくなったのだ。神田は。
暑さにも構わずに抱きしめてキスをした。
乱暴に服を乱して、唇を貪り合って、お互いの背中に手を回した。
熱と暑さが加速して。
流れる汗にも構わなくなった。
そんな夏だった。



■□



冷たくなった手で、ラビは神田の頬に触れた。
刺すような鋭い視線が、『手を離せ』と訴えているけれど。
薄く開いた唇は誘っているようで。
結局、ラビは手を離す前に、乾いた唇を神田のそれに押し付けた。

「……まだ外だ。やめろ」

唇が離れた途端、鋭い拒絶の言葉。
同時に、『まだ』という微妙なニュアンス。

「じゃ、泊まるとこ見つかったら、いいんだ?」
「外よりはマシだ。とにかく、今は止めろ」

ラビは笑って頷いた。
神田はその笑顔を見てすぐに、視線を逸らした。
照れて。あの時と同じように。

「はやく、どっか泊まるとこ探そうぜ」
「……任務が終わったらな」
「今日は奇怪が起こらない日かもしれないだろ?」
「…………」

はやく暖かいところに行きたい。
冷え切った身体を暖めたい。
そして、もっと熱くなることをしたい。
その方法を知っているから。2人で。

「冬に着崩しも、イイんじゃねェ?」
「……どうだかな」

つれない返事をする神田も、きっとその服を乱して。
冷えた指先で頬を撫でて。
乾いた唇を舌先で濡らしてからキスをする。
着崩した状態で中途半端に身体から滑り落ちた服を奪う。
外の寒さと部屋の中の熱さが。その温度差が。
窓を白く染めた。



End......


ラビュー秋祭典に寄稿させていただきました。